近年になって、自動車の電動化が急速に進みつつあります。脱炭素を目指す世界的な流れ、自動運転のニーズなどとあわさって、すでに自動車業界は革命的な変化を迫られており、電動自動車(EV)への対応は急務となっています。
自動車というものは、極めて複雑な構造をなしているものです。一つの改革をおこなうために考慮しなければならないことは無数にあり、そのために必要となる技術の数も他業種と比べて並外れています。
そのような状況の中、EVの普及とともに更なる用途の拡大が期待されているのが、ダイカストです。この記事では電動自動車(EV)とダイカストの関係や、ダイカストがコストを抑えることに役立つ理由などを詳細に解説します。
帝産大鐘ダイカスト工業が運営する薄肉・高精度ダイカスト 開発センターでは、お客様の技術課題、生産や調達に関するお困りごとを一緒になって解決に取り組みます。当社では高品質・コストダウン・製造リードタイムの短縮といったメリットを提供するために数々の技術提案も豊富にございます。アルミダイカストの技術を使って製品の軽量化を実現したいとお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。
目次 ▼弊社のダイカスト製品の製造事例はコチラからご覧いただけます。
電気自動車(EV)に利用されるダイカスト
もともと自動車は無数の複雑な部品から構成されるものでしたが、電動化へのシフトが進むにつれて、その傾向はさらに強まっていきました。従来の自動車も電動自動車も、見た目には似たような形状をとっていますが、内部的にはかなり異なります。多くの部分に従来とは異なる考え方が導入されており、パーツ単位で求められる新しい技術の数は計り知れません。
電動自動車にはさまざまな課題が残されていますが、その一つに重量の問題があります。従来のガソリン車と比べてどうしても重くなってしまうため、これまで以上に車体の軽量化が求められているのです。「鉄の塊」とも表現される自動車ですが、これからの時代は鉄以外の素材を使ってさまざまなパーツを製造する必要に迫られています。
そこで注目を集めているのが、ダイカストという技術。
ダイカストとは、鉄以外の金属を溶かして混ぜ合わせ、精密な金型に高速・高圧力で注入し、瞬時に製品を形作る鋳造技術のことを指します。使われる主な材質は、アルミニウム・マグネシウム・亜鉛などの合金。具体的なメリットは後述しますが、従来のものよりはるかに電動自動車に適したパーツを製造することができ、これからのEV時代に貢献できる技術として注目を集めています。
電費の向上に貢献できる理由
先ほど電動自動車にはさまざまな課題が残されていると述べましたが、その一つに航続距離の問題があります。現在の電動自動車の技術で、従来のガソリン車と同じように安定的に長距離を走らせるのは簡単なことではありません。その際の指標として使われるのが電費(電力消費率)。わかりやすくいうと、同じ電力でどれくらいの距離を走ることができるかという数値です。
電費の高い電気自動車を開発するためには、より効率的なエンジンの開発などさまざまなアプローチがありますが、その中の一つとして、車体重量をできるだけ軽いものにすることが挙げられます。言うまでもなく車体が軽ければ軽いほど、同じエンジン、同じ電力でより遠くまで走らせることができるからです。
車体を軽量化する際に威力を発揮するのが、ダイカストと呼ばれる技術です。なぜならダイカストを導入することによって、これまで鉄で作っていたパーツの多くをアルミニウムなどのより軽い合金に置き換えることができ、車体全体をはるかに軽くすることが可能になるからです。
単純に比重で比較しても、鉄が7.8であるのに比べて、アルミニウムは2.7です。約3分の1の重さしかないアルミニウムでパーツ置き換えられるのであれば、かなりの軽量化に成功できることは言うまでもありません。
ダイカストで製造できる自動車のパーツ
ダイカストによって製造できる自動車のパーツには、以下のようにさまざまなものがあります。
- ショックタワー
- ルーフポスト
- リアエンドポスト
- ヒンジピラー
- キックダウンレール
- トンネルトップ
- サイドメンバー
- リアストラットタワー
- フロントサブフレーム
- リアサブフレーム
これだけのパーツを、すべて3分の1の比重の素材に置き換えられるのであれば、車体全体がどれほど軽くなるのかは想像に難くないでしょう。ここにダイカストが注目を集めている理由があります。
ダイカストを利用する3つのメリット
ここまでダイカストが電動自動車の軽量化に貢献できることを解説しましたが、ダイカストのメリットはそれだけではありません。他にも以下の3つのメリットが存在します。
- 耐候性が良い
- 複雑な形状の製作が可能
- 安定して量産できる
いずれも自動車の製造において大きな武器となる要素なので、以下の解説を読んでダイカストの魅力を把握しておきましょう。
メリット①:耐候性が良い
ダイカストによって作られるパーツのメリットとして、耐候性が良いことが挙げられます。
耐候性とは、太陽の光や温度、湿度、雨といった屋外の自然環境に耐えられる性質のことです。耐光性が悪いと、太陽光によって簡単に変色をしてしまったり、昼夜の温度変化についていけず素材が膨張・伸縮してしまったり結露してしまったりといった弊害が生まれます。従来の鉄製パーツの場合、錆びついてしまうのも頭を抱える問題の1つでした。
しかしダイカストで作ったパーツはアルミニウムなどの合金を使用しているため、鉄製のパーツとは事情が異なります。アルミニウムと一口に言ってもさまざまな種類があり、中には剛性の高いものや耐候性の良いものも含まれています。それらを選び、さらに化学処理を施すことによって、さまざまな環境に耐えられる使い勝手の良いパーツを生み出すことが可能です。
メリット②:複雑な形状の製作が可能
ダイカストで用いるアルミニウムなどの合金は、鉄と比べて柔らかいため、複雑な形状の部品を製作しやすいというメリットがあります。
素材として鉄を利用した場合、あまり複雑なパーツを作ることができないため、単純な形状のパーツをボルトやナットで繋ぐというかたちをとることが多くあります。しかしこういった結合部は強度の点で見劣りするものであり、かつ、そのぶん肉厚が増してしまうなどの欠点があります。
ダイカストの技術を使って、初めから複雑な単一のパーツを製造してしまえば、結合部が存在しないため部分的に弱いところがないスマートなデザインを実現できます。同じ機能のものをより小さく作ることができるので、鉄に比べて強度で劣る点を厚みでカバーするなど、柔軟な対応も可能になります。
メリット③:安定して量産できる
ダイカストの技術を用いると、画一的なパーツを安定的に量産できます。これも製造過程においては大きなメリットといえるでしょう。
鉄を使ってパーツを製造すると、それぞれの部品の精度の違いや、溶接したときの組み立ての誤差などによって、クオリティにばらつきが生まれます。それに対してダイカストを利用した場合には、複雑な形状のものをほぼワンステップで作ってしまうので、製造過程で生まれる誤差を最小限にとどめることが可能です。
品質が安定したものを量産できるということは、それだけ完成品としての電動自動車のクオリティがアップするということであり、ひいては安定性の向上にも貢献することになります。
【関連記事】ダイカストとは?メリット・デメリットを解説
コストダウンをしたいのなら
ここまで解説してきた通り、これから爆発的に成長していくであろう電動自動車産業において、ダイカストの技術は必要不可欠ともいえるものです。しかしどれだけ優れた技術であったとしても、コストがかかってしまうのではなかなか導入に踏み切れないことでしょう。
そこでコストダウンを図りたい場合には、ぜひ弊社・帝産大鐘ダイカスト工業の利用をご検討ください。弊社ではダイカストにおけるコストダウン・品質向上・小ロット生産などのお悩みに対して、スピーディーな解決策を提案いたします。設計から検査までワンストップで承っており、お手を煩わすことなく低コストで高品質な製品をご提供できる自信があります。
ダイカストの技術に興味を持たれたのであれば、ぜひ弊社までお問い合わせください。
まとめ
電動自動車(EV)におけるダイカスト技術の重要性や、その具体的なメリットなどについて解説しました。
電動自動車はこれから間違いなく爆発的に普及していくものであり、それにともないダイカスト技術のニーズが高まることもほぼ確定的です。ダイカストの技術を上手に活用することは、業界における当たり前のたしなみのようになっていくことでしょう。
この記事を参考にして、ぜひダイカスト技術への理解を深めてください。
【関連記事】ダイカストの種類と特徴をご紹介
【関連記事】ダイカストで製造できる製品例をご紹介
【関連記事】ダイカストとは?メリット・デメリットを解説
▼弊社のダイカスト製品の製造事例はコチラからご覧いただけます。