ダイカストは複雑な形状の部品を一瞬で生産できる便利な鋳造方式です。特に自動車部品の鋳造で多く用いられており、生産性の高さが評価されています。
しかし、ダイカスト部品に欠陥は付き物です。
気を付けなければ、不良品を生産してしまうかもしれません。ただ、ダイカストの欠陥は事前にしっかり対策を施しておけば防げます。
この記事では、ダイカストの欠陥が起きる理由や原因、対策をご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
帝産大鐘ダイカスト工業が運営する薄肉・高精度ダイカスト 開発センターでは、お客様の技術課題、生産や調達に関するお困りごとを一緒になって解決に取り組みます。当社では高品質・コストダウン・製造リードタイムの短縮といったメリットを提供するために数々の技術提案も豊富にございます。アルミダイカストの技術を使って製品の軽量化を実現したいとお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。
目次
▼弊社のダイカスト製品の製造事例はコチラからご覧いただけます。
ダイカストの欠陥とは
ダイカストとは、溶かした金属を高圧かつ高速で金型に流し込む鋳造方式です。ダイカストを用いれば複雑な部品でも一瞬で生産できます。
そのため、自動車部品を中心にダイカストを採用する機会は増えています。しかし、ダイカストでも欠陥は発生してしまいます。欠陥の種類と原因を把握し、対策を施しましょう。
ダイカストで欠陥が起きる理由
ダイカストは高圧かつ高速で溶融金属を金型に流し込むことで部品を作る鋳造方式です。
その過程で問題が発生すると欠陥につながります。
欠陥を起こす要因として、注目すべきは下記の2点です。
- 気密性が保たれていないこと
- 強度信頼性
ここまでの内容を踏まえて、具体的なダイカストの欠陥や原因、対策を見てみましょう。
ダイカストの欠陥①:鋳巣
ダイカストの欠陥1つ目は、鋳巣(いす)です。
鋳巣とは、鋳造物の内部に発生した空洞が表部分にまで現れてしまう欠陥です。
▼鋳巣(ちゅうす)とは?種類や原因、弊社の対策を徹底解説
鋳巣の原因・対策
鋳巣が発生してしまう原因には、さまざまなパターンが考えられます。具体的には、溶温の温度が適切でないことや、ガスが発生していること、溶融金属が通る湯道の問題、溶融金属の不足などが主な原因です。
原因がさまざまであるため、対策も多岐にわたります。湯道の点検、鋳造圧力の最適化、ガス抜き穴の見直し、溶温の温度の確認などが主な対策です。
鋳巣はダイカストの代表的な欠陥です。設備を入念にチェックして対策しましょう。
ダイカストの欠陥②:充てん不足
充てん不足は、文字どおり溶融金属が金型の隅々まで充てんされないことが原因で、不完全な形の成形品ができてしまうことです。
充てん不足の原因・対策
充てん不足の原因は、溶融金属が金型の細部にまで充てんされないことです。その理由として、下記の内容が考えられます。
- 溶融金属が不足している
- 圧力が低い
- 金型の温度が合っていない
- 湯口の大きさ、配置が適していない
溶融金属、金型、湯口を中心に見直しましょう。
ダイカストの欠陥③:割れ・変形
割れ・変形とは、成形品が凝固中に割れたり変形したりすること、もしくは冷却中に割れや変形が起きてしまうことです。
割れ・変形の原因・対策
多くの場合、割れ・変形の原因は温度や押し出しの問題にあります。たとえば、温度が高すぎると凝固中に割れ・変形が起きてしまい、温度が低すぎると冷却中に割れ・変形が起きてしまいます。
見直すべきは、温度回りの設計と押し出し位置です。
ダイカストの欠陥④:湯じわ
湯じわとは、成形品の表面に不規則なしわが発生することです。しわが比較的浅い場合に、湯じわと呼びます。
湯じわの原因・対策
湯じわが発生する主な原因は下記の3点です。
- 溶融金属の温度が低い
- 酸化膜が発生している
- 金型の内部で乱流が発生している
対策としては、まず溶融金属の温度を上げることです。他には、離型剤を少なめにすることで改善する場合があります。
ダイカストの欠陥⑤:焼付き
焼付きとは、溶融金属が金型に溶着することです。過熱により金属が部分的に焼き付いてしまいます。
焼付きの原因・対策
焼付きの原因は、温度が高すぎることです。過剰な熱により金属がくっついてしまいます。
離型剤を調整、変更することで改善する場合があり、塗布方法を変更すべきケースもあります。場合によっては金型の設計変更が必要です。
ダイカストの欠陥⑥:変色
変色とは、成形品表面が変色することです。一般的に、離型剤が原因で発生します。
変色の原因・対策
変色の主な原因は離型剤の成分が成形品の表面に影響を与えていることです。そのため、離型剤を変更すれば改善が見込めます。
ダイカストの欠陥⑦:ハードスポット
ハードスポットとは、成形品内部に混入してしまった硬い異物です。表面に傷ができるなどの欠陥を起こします。
ハードスポットの原因・対策
ハードスポットの原因は硬い異物が混入してしまうことです。そのため、多くの場合は溶融金属のフィルタに問題があります。
溶融金属のフィルタを点検・処理して対策しましょう。
ダイカストの欠陥⑧:ヒケ
ヒケとは、成形品にくぼみが発生してしまうことです。多くの場合、金型の温度に原因があります。
ヒケの原因・対策
ヒケの原因は、金型の部分的な過熱により、成形品の冷却が遅れてしまうことです。対策するには、金型の環境を見直す必要があります。金型の温度を調整したり、設計を見直したりして対策しましょう。
ダイカストの欠陥⑨:コールドシャット
コールドシャットとは、成形品につなぎ目ができてしまうことです。湯境とも呼ばれます。
コールドシャットの原因・対策
コールドシャットの原因は、溶融金属が金型の細部にまで充てんされる前に凝固してしまい、合流する箇所につなぎ目ができてしまうことです。
金型温度が低い場合や圧力が低い場合にコールドシャットが起きてしまいます。対策は、金型および溶融金属の温度を上げることです。
他に、プランジャー速度の上昇、湯口の配置や設計の見直しにより改善する場合があります。
ダイカストの欠陥⑩:破断チル層
破断チル層とは、金型に溶融金属を注入する際に凝固片が混入してしまうことです。破断チル層により、成形品は壊れやすくなってしまいます。
破断チル層の原因・対策
破断チル層の原因は、溶融金属が急速に冷えることです。溶融金属の温度の見直しや、プランジャー速度の調整で改善が見込めます。
ダイカストの欠陥⑪:かじり
かじりとは、成形品の表面に大きな擦り傷がついてしまうことです。
かじりの原因・対策
かじりの原因は、成形品を取り出す際に一部が金型に溶着するなどして上手く取り出せないことです。金型の研磨や、成形品を取り出しやすい設計にすることが対策です。
ダイカストの欠陥⑫:ふくれ
ふくれとは、成形品の表面が膨れ上がることです。
ふくれの原因・対策
ふくれの原因は、圧縮されたガスの膨張です。仕組みは鋳巣と似ています。そのため多くの原因が考えられるので、対策すべきこともさまざまです。
湯道、鋳造圧力、ガス抜き穴、溶温の温度などをチェックし改善する必要があります。また、金型の冷却時間を長くすることで改善する場合があります。
ダイカストの欠陥⑬:肌荒れ
肌荒れとは、成形品の表面が粗く汚れたようになってしまうことです。多くの場合、溶融金属ではなく金型に問題があります。
肌荒れの原因・対策
肌荒れの原因は、金型表面部の粗さです。金型表面の粗さを反映するように成形品に肌荒れが発生します。
そのため、金型を研磨し掃除すれば改善します。
【関連記事】鋳造欠陥とは?種類と原因・対策を解説!
まとめ
ダイカストは複雑な部品の生産や、短時間での大量生産を可能にする便利な鋳造方式です。
ただ、注意しなければさまざまな欠陥が発生してしまいます。
この記事では、ダイカストでよく起きる欠陥13種類の原因と対策を紹介しました。
もっとダイカストについて知りたい、ダイカストの導入を検討したいという方は、気軽に当社へお問い合わせください。
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