ダイカスト鋳造で起きる欠陥の一種に湯境・湯じわがあります。
湯境・湯じわが起こると、製品が必要な品質を満たせなくなってしまう恐れがあるため、こうした欠陥を発生させないようにすることが大切です。
では、湯境・湯じわはどのようなときに起きるのでしょうか。
今回は、湯境・湯じわとはどのような現象なのか、鋳物に及ぼす悪影響や発生の原因について解説していきます。
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目次
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湯境・湯じわとは
ダイカスト鋳造では溶かした非鉄金属を鋳型に流し込み、圧力をかけて鋳物を形成していきますが、このとき溶湯の流し込みが上手くいかず、表面に境目やしわが生じてしまう現象が湯境・湯じわです。
複数方向から流し込まれた溶湯が鋳型内で合流する際にきちんと融合できず、合わさった部分にすじ状の境目ができた状態を湯境といいます。
境目は表面だけで済む場合もありますが、内部まで断面を貫通していることもあり、こちらのほうがより深刻です。
湯じわは鋳型に流し込んだ溶湯が固まるとき、表面に浅く不規則なしわができてしまう現象です。
湯境・湯じわによる悪影響とは
湯境・湯じわが発生すると、規定された液体や気体の圧力に耐えられず圧漏れが起きる原因になります。
ひどくなるとクラック(割れ)や鋳物の強度不足につながる恐れもあります。
境目が内部にまで及んでいることのある湯境と比べると、表面だけの湯じわは比較的マシともいわれますが、いずれにしても、これらの欠陥が起きると鋳物が図面などで定められている品質を満たせなくなってしまいます。
湯境・湯じわが発生する原因
湯境・湯じわを防止するには、欠陥が発生する原因を知り、対策を行う必要があります。
ここからは、湯境・湯じわが起きる主な原因についてご説明します。
原因① 温度が低い
鋳型に流し込むときに溶湯温度や金型の温度が低すぎると、溶湯の密着や凝固が上手くいかずに湯境・湯じわが起きやすくなります。
温度の低い溶湯や鋳型を使用すると、きちんと融合する前に凝固したり、流動中に温度が下がり、酸化膜が形成されて湯境・湯じわの原因になります。
溶湯は人の目で見たときは溶けているようでも、完全な融点に達していないこともあるので注意が必要です。
また、溶湯を流す射出スリーブの保温性が悪い場合や給湯から射出までの時間(ショットタイム)や射出時間が長すぎるときも温度低下を引き起こします。
原因② 鋳型のガス抜きが悪い
鋳型からのガスや空気の排出が悪い箇所には湯境・湯じわが多く起こります。
溶湯のもとにある金属や鋳型にはもともとガスが含まれており、きちんとガス抜きができていない状態で流し込むと欠陥の原因になります。
また、中子からガスが多く発生する場合などは、鋳造の際にも鋳型からの排出を適切に行う必要があります。
原因③ 鋳物の肉厚が薄い
鋳物の肉厚が薄すぎる場合も湯境・湯じわの原因となります。
鋳物は肉厚が薄いほど凝固時間が短縮できるので、基本的には良いこととされますが、薄すぎると溶湯がきちんと融合する前に凝固し、欠陥を起こしてしまいます。
原因④ 湯口法案に問題がある
湯口方案は、溶湯を流し込む方向や流すときの経路、押し湯をどこに作るかなどを決めた鋳造の設計図といえるもので、ここに問題があると鋳物の出来にも悪影響を与えます。
例えば、湯口方案の設定が悪く、溶湯がきちんと流れないと乱流やエアトラップが発生して湯境・湯じわを引き起こします。
鋳物に欠陥が起きるのは鋳造のやり方自体に問題のあるケースも多く、こうした場合は湯口方案から修正する必要があります。
原因⑤ 鋳込高さが低い
溶かした金属を鋳型に流し込む際の湯口の高さが低すぎる場合も湯境・湯じわが起こりやすくなります。
湯境・湯じわを防ぐには高い技術が必要
上記のように、ひとくちに湯境・湯じわといっても原因には様々なものがあります。
1つの問題が原因になっているだけでなく、いくつかの原因が複合的に作用して欠陥を引き起こしているケースも存在します。
湯境・湯じわを防ぐために、まずは何が原因となって鋳造欠陥が起きているかを見極め、適切な対処法を考えなければなりません。
そのためには、これまでに多くのダイカスト鋳造を手掛けてきた経験や鋳造に関する知識と高い技術が求められます。
【関連記事】ダイカスト金型で起こる欠陥、焼き付きとは?概要と対策について解説
まとめ
湯境・湯じわはダイカスト鋳造で溶湯を鋳型に流し込むときに発生する欠陥です。
湯境・湯じわが起きてしまうとガス漏れやクラック、強度不足などが起き、鋳物に求められる品質を達成できない恐れがあります。
欠陥の原因には、温度の低下からガス抜きの不足、湯口方案のミスなど様々なものが考えられるため、防止するには高い技術が必要になります。
ダイカスト鋳造での湯境・湯じわを防ぎたいとお考えの場合は、豊富な実績をもつ会社に任せてみてください。
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