アルミダイカストは金型へ溶湯した合金を圧をかけながら流し込んで成形する方法です。「大量生産しやすい」や「寸法精度を高めやすい」といったメリットがあります。
一方、退色や膜にはがれが生じやすいデメリットがあるのも事実です。そこで、本記事ではアルミダイカストの表面処理に関する詳しい内容について解説します。
目次
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アルミダイカストにおける主な表面処理の方法
アルミダイカストにおける主な表面処理の方法として、次の5つ方法が挙げられます。
- めっき
- 研磨・梨地
- 化成処理
- 塗装・印刷
- アルマイト
さまざまな表面処理の方法があり、それぞれに特徴が異なります。ここでは、方法ごとの詳しい内容についてみていきましょう。
処理方法①:めっき
写真引用:ダイカスト品質ハンドブック|日本ダイカスト協会
アルミダイカストの表面処理で、まず挙げられるのが「めっき」です。金属感を残したり、導電性や電磁波シールド性を求めたりする場合にめっきが効果的です。
ほかにも、耐食性や強度、放熱性、装飾性といった点でも、めっきによる表面処理は効果を発揮します。そのため、製品の価値を高めるうえでも、めっきは欠かせない方法の1つです。
処理方法②:研磨・梨地
アルミダイカストの表面は、研磨・梨地(ナシジ)による加工でも処理できます。研磨や梨地をすることで化成処理のようなバリや凹凸などの処理が不要となります。
研磨にはさまざまな方法がありますが、バフ研磨、鏡面バフ仕上げ、エンドレス仕上げなどが一般的です。
また、梨地とは金属の表面に細かな凸凹をつくることで、ざらざらとした質感に仕上げる処理方法を意味します。一般的に梨地処理にはショットブラストが用いられます。ショットブラストとは金属の表面に投射材をあて、表面を粗くする加工方法です。
処理方法③:化成処理
化成処理もアルミダイカストにおける表面処理の1つです。アルミダイカストの化成処理として一般的には塩水噴霧試験です。
24〜48時間にわたって塩水を噴射をすることで、腐食面積率を「RN9.5以上」にできます。RNとは「レイティングナンバー」を指し、腐食の程度を表すための指標です。
全く腐食がない状態を「10」、完全に腐食している状態を「0」として表し、10に近いほど腐食の面積率が低いことになります。
処理方法④:塗装・印刷
アルミダイカストの表面を塗装、もしくは印刷することでアルミダイカストの表面処理ができます。塗装をする目的は主に外観面が重要なものを扱うときです。しかし、それ以外にも高度な耐食性や皮膜の硬さが重要な時に用いられます。
この他にも、表面を塗装することによって高級感を出すことができ傷がつきにくいメリットを付加することもできます。
処理方法⑤:アルマイト
アルミニウムはアルマイト処理を用いるのが一般的です。アルマイト処理には、耐食性や強度を上げたり反射防止をしたりといったさまざまな効果があります。
他にもさまざまなカラーリングをしたり、電力を流れなくしたりとアルミニウムではできないような特色を加えることが可能です。ただし、退色やはがれが生じやすい点はデメリットといえるでしょう。
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アルミダイカストをアルマイト処理をするメリット
アルミダイカストをアルマイト処理をすると、次のような4つのメリットが挙げられます。
- 耐食性を高められる
- 硬度や耐摩耗性が高まる
- 色味を調整できる
- 電流が流れなくなる
アルミダイカストを陽極酸化処理すると酸化皮膜を強化できます。その結果として、耐食性を高めたり、耐摩耗性が高まったりといった特性を生み出せるのです。ここでは、メリットごとの詳しい内容について解説します。
メリット①:耐食性を高められる
アルミ二ウムは耐食性を持つ金属です。そのため、水や酸素に反応をすると腐食するという特性があります。しかし、アルマイト処理をして耐食性を高めれば、腐食や変色を防げます。
ただし、アルマイト処理はアルカリ性に弱く、そのような環境でアルマイト処理すると逆効果となる点には注意が必要です。
メリット②:硬度や耐摩耗性が高まる
アルマイト処理によって、硬度も高められます。アルミニウムの硬度は「Hv20〜150程」と、金属の中では低い方の部類にあたります。
しかし、アルミニウムをアルマイト処理すれば硬度を「Hv200~600」と、10倍程度まで上げられるのです。さらに、繰り返しの使用による摩耗に耐え、性能を維持する性質耐摩耗性を高める効果もあります。
メリット③:色味を調整できる
アルマイト処理は色味も調整できます。これを着色アルマイト加工処理と呼び、微細孔に染料を加える方法が一般的です。
同じアルマイトカラーを使うにしても、下地処置の仕方によって印象の異なる色合いに仕上がります。
メリット④:電流が流れなくなる
アルマイト処理を施すことで、電流が流れなくなります。アルミニウムは通常、電流が流れる材質です。
しかし、アルマイト処理すると表面に絶縁性を持つ酸化被膜が作られ、電流を通さなくなります。このように、アルミニウムをアルマイト処理すると性質を補助したり、変化させたりといった効果を期待できるのです。
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アルミダイカストをアルマイト処理をするデメリット
アルミダイカストをアルマイト処理をすることで、耐食性や硬度、耐摩耗性などが高められます。ただし、いくつかのデメリットがあるのも事実です。主なデメリットとして次の2つが挙げられます。
- 紫外線や高温による退色が生じやすい
- 被膜にはがれが生じやすい
これらのデメリットははがれや退色の原因となるものです。ここでは、それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
デメリット①:紫外線や高温による退色が生じやすい
色の付いているアルマイトは見た目が良く、さまざまな製品に使いやすいという特徴があります。一方、アルマイト処理による酸化皮膜は退色しやすく、その変化に注意する必要があります。
特に、紫外線や高温の影響を受けやすく、製品の使用環境によって退色を早めます。また、紫外線や高温以外にも、空気中の水分が原因で退色する可能性もあるため注意しましょう。
デメリット②:被膜にはがれが生じやすい
アルマイト処理は耐熱性が低く、100℃前後でクラックが生じます。クラックとは、ひび割れや亀裂のことです。
また、アルマイトは柔軟性も低いため、加工したり加熱したりすると被膜がはがれてしまう可能性があるので注意しましょう。
まとめ
アルミは表面処理をすることで、本来の特性をさらに活かせます。もともと耐食性の強いアルミも、湿気が多いと酸化が進み腐食しやすくなります。
しかし、めっきや化成処理、塗装・印刷、アルマイトといった表面処理をすることで耐食性を強くすることが可能です。中でもアルマイト処理は耐食性を高められるだけでなく、硬度を高めたり、電流が流れなくしたりといった効果も得られます。
ただし、アルミをアルマイト処理をすると「紫外線や高温による退色が生じやすい」や
「被膜にはがれが生じやすい」といったデメリットがあるのも事実です。
アルミダイカストの表面処理でお困りの場合はアルミダイカスト鋳造専門の帝産大鐘ダイカスト工業にぜひご相談ください。
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