鋳造法などの理解を深めたいと考えている際、重力鋳造がどういった方法かわからずに困っている方は多いのではないでしょうか。
重力鋳造とは、直接圧力を加えずに、重力のみで溶かした金属を金型に注ぎ入れる鋳造法です。
人気を博す鋳造法と比較して、異なるメリットを持っているため、シチュエーションに合わせて重力鋳造を利用できれば高い効率で加工を進められます。
この記事では、重力鋳造のメリット・デメリットや、他の鋳造法との違いについてご紹介します。
目次
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重力鋳造とは
重力鋳造とは、重力により溶かした金属を金型に注ぎ入れる鋳造法です。
「重力金型鋳造法」や「グラヴィティ鋳造」の名称でも呼ばれています。
昨今の鋳造法では、ダイカストなどの高い圧力で溶かした金属を瞬時に充填する方法が主流です。
一方で重力鋳造では、重力によりゆっくりと溶かした金属を注ぎ入れるため、コストパフォーマンスや気密性に優れています。
重力鋳造の一般的な構造をご紹介します。
まず、ロボットで溶かした金属を保持炉から汲み上げ金型へと流し込みます。
金型内で金属が凝固してから製品を押し出すことで、製品を取り出す構造です。
他の鋳造法と比較して大規模の設備を必要としないため、比較的少ない設備費で導入できます。
重力鋳造のメリット
重力鋳造のメリットを3つご紹介します。
- 複雑な形の鋳造に適している
- 気密性が高い
- 導入コストが低い
メリット①:複雑な形の鋳造に適している
重力鋳造のメリットの1つ目は、「複雑な形の鋳造に適していること」です。
重力鋳造で砂中子を使用できるため、空洞や細かな凹凸を持つ製品を鋳造できます。
圧力を加える鋳造法では砂中子は使えないため、重力のみで圧力を加えずに加工する重力鋳造ならではの強みでしょう。
メリット②:気密性が高い
重力鋳造のメリットの2つ目は、「気密性が高いこと」です。
重力のみで圧力をかけずに行う重力鋳造では、空気の入り込みを抑えられます。
金型内のガスが自然と抜けるため、鋳巣が発生しにくいことが利点です。
鋳巣とは、溶かした金属が空気を巻き込むことなどが原因で空洞が生じる鋳造欠陥です。
製品に空洞が生じてしまうと割れるリスクが高まりますが、重力鋳造ならば鋳巣が起きるリスクを軽減できます。
メリット③:導入コストが低い
重力鋳造のメリットの3つ目は、「導入コストが低いこと」です。
大規模の設備を必要としない重力鋳造ならコストを抑えて導入できます。
ダイカストなどの鋳造方式は導入コストが高い代わりに高い生産性を特徴としますが、重力鋳造は生産性が高くない代わりに導入コストを抑えられます。
また、同じ金型を繰り返し使用できるので、汎用性が高いことも強みです。
重力鋳造のデメリット
重力鋳造のデメリットを3つご紹介します。
- 薄肉の鋳造に適していない
- 冷却に時間がかかる
- 金型に塗型剤が必要
デメリット①:薄肉の鋳造に適していない
重力鋳造のデメリットの1つ目は、「複雑な形の鋳造に適していること」です。
重力のみで圧力を加えない重力鋳造では、湯流れに課題が残るケースが多々見られます。
湯流れの問題を考慮すると、薄肉の鋳造に重力鋳造は不向きです。
デメリット②:冷却に時間がかかる
重力鋳造のデメリットの2つ目は、「冷却に時間がかかること」です。
時間をかけて溶かした金属を注ぎ入れる重力鋳造では、金型の温度が高まりやすく、冷却にも時間がかかります。
また、そもそも金属を注ぎ入れる過程にも時間がかかるため、大量生産には向いていません。
デメリット③:金型に塗型剤が必要
重力鋳造のデメリットの3つ目は、「金型に塗型剤が必要であること」です。
金型内の溶かした金属の冷却に時間がかかると、金型と金属が反応しやすくなってしまいます。
そのため、重力鋳造を行う場合は金型を保護するための塗型剤が欠かせません。
重力鋳造と他の鋳造方法の違い
重力鋳造と他の鋳造方法の違いを2つご紹介します。
- 重力鋳造とダイカストの違い
- 重力鋳造と低圧鋳造の違い
重力鋳造とダイカストの違い
重力鋳造と他の鋳造方法の違いとして、「重力鋳造とダイカストの違い」をご紹介します。
ダイカストとは、高い圧力により溶かした金属を高速で充填させる鋳造方法です。
生産スピードが高く、寸法精度が高い点で評価を集めています。
大量生産に向いているため、車の部品の生産を中心に幅広く用いられています。
ダイカストと比較して重力鋳造が優れている点は、設備コストが低いこと、砂中子を使えること、強度が高いことなどが挙げられます。
小ロットで製品を生産したい場合や、空洞のある製品を生産したい場合などでは、ダイカストよりも重力鋳造が適しているでしょう。
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重力鋳造と低圧鋳造の違い
重力鋳造と他の鋳造方法の違いとして、「重力鋳造と低圧鋳造の違い」をご紹介します。
低圧鋳造とは、空気圧や不活性ガス圧などにより溶かした金属を金型に注ぎ入れる鋳造方法です。
砂中子を使えることや、冷却に時間がかかることは重力鋳造と共通しています。
一方で、圧力を加えられるため、流速調整ができる点や歩留まりが高くなる点、生産スピードでは低圧鋳造の方が優れています。
ただ、重力鋳造よりも低圧鋳造の方が設備コストが高いことがネックです。
まとめ
今回は重力鋳造についてご紹介しました。
重力鋳造は、複雑な形の鋳造に適していることや、気密性が高いこと、導入コストが低いことなどが特徴の鋳造法です。
もっと重力鋳造を深く理解したい、ご相談したいという場合は、気軽に当社へお問い合わせください。
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